「まったく、何かと思えばプーカのおちびさんたちか。
ビックリして損したわ」
女エルフは溜め息をつきながら言いました。
「あたしの名前はリミイ。言っとくけど、あたしは人間なんていう野蛮な種属じゃないわ。
あたしは森妖精エルフなの」
「なんだあ、おばさんも妖精だったんだ」
ニンゲンじゃない、と聞いてラディーは安心したようだ。
西のパコという地方にここより大きい森があり、そこにエルフという妖精が住んでいるという話をプーカの村できいたことがありました。
「あのね……おばさん、てのはやめてくれない？
妖精は長生きなんだから、あなた達だって何十年かは生きてるんでしょ？
あたしはエルフの中では若い方なの」
「ぼくはカイン。１歳と２ヶ月だよ」
「あたしはラディー。生後８ヶ月」
エルフのリミイは額を手で抑えました。自分が百年以上生きているとは言えません。
「おねがいだから、あたしのことはお姉さん、と呼んで。
それから歳は聞かないでね」
「じゃあ、お姉ちゃん。ぼく達の森に何しにきたの？
他の種族の人がくるなんて、めったにないことだよ」
「あのね、この森にある宝物を貸してもらいにきたの。
浄化の宝珠、この名前はきいたことある？」
その宝物のことなら、カインはよーく知っていました。
何しろ、カインがそれで遊んでいて、うっかり無くしてしまった物なのです。
村でただ一つきりしかない宝物で、あのときはお尻を百叩きされました。