カインとラディーは森の中の少し開けた場所で、これからどうするか考えることにしました。
「この森に入ろうとしているよそ者ってどんな奴なのかな」
カインが聞くと、ラディーは少し考えて答えました。
「小鳥さんから聞いた話では、背はあたしたちよりずっと高かったみたい。
あと、耳が顔の横についてて、シッポはなかったって」
「うーん、それってやっぱり、噂に聞くあれかな……」
２人は同じものを想像しました。ニンゲン……というものを。
人間の存在は、妖精の世界では評判がわるいです。
彼らは欲が深く、プーカを見つけると捕まえてようとします。
奴隷として高く売れるのでしょう。
また、人間たちは同族で憎みあい、殺しあうこともあるそうです。
「カイン、もしこの森に入ってきたのがニンゲンだったら……」
ラディーが恐々と言いかけ、急に口をつぐみました。
２人の耳に、微かに草を踏む足音が聞こえたのです。
プーカの足音ではありません、というよりプーカは走るときでも足音はでないのです。
動物の足音でもないようです。
カイン達の知らない何かがこちらに近づいてきます。
カインとラディーは顔を見合わせると、一挙動で頭上の木の枝に飛び上がりました。
まったく音を立ちませんでした。
学者の中には、プーカは重力や空気抵抗を味方に付けている、と主張するものもいます。
木の上から下界をみていると、何者かが姿を現しました。